第4回 『オヤッサンの店に常連客って存在するの?』

「オヤジさ……前から聞きたかったんだけど、むなしくならないのか?」
「むなしくって何がよ?」
「どれだけ料理を作っても、誰も食べてくれないわけだろ?」
「いやいや、誰もってそんなこたぁねえよ。ウチにも常連客がいるからな」
「はぁ、常連客って……辛すぎて幻覚まで見るようになったのかよ」
「現実だよ!?
 人をあわれんだ目でみるんじゃねぇよ!!」
「鈴鳴さん、オヤッサンは嘘を言っていませんよ」
「……マジでか?」
「ええ、驚くべきことに」
「別に驚くこっちゃねえだろうが、味ってのは人の好き好きだしよ?」
「食べた人間が気絶するのは、味の好みの問題じゃないと思うぞ……」
「ま、まあ、時代の最先端を行き過ぎてるのか、常連もそれほど多くはねえがな」
「ふむ、精神と内蔵の鍛錬と思えば、あの料理にも価値があるんですかね……」
「自発的に、この店の料理を食べるって、どんだけドMなのよ」
「へへっ、まあ、嫉妬するなよ。自分の味覚がお子様で、ウチの料理の凄さが分からないからってよ」
「もしも、そうなら俺は永遠に子どもでいるよ」
「風の噂で常連客の存在は聞いていたのですが、具体的には何名ほどいらっしゃるので?」
「えーと、少なくとも5人は結構な頻度で食べに来てくれるな」
「……年に一度くらい?」
「それは常連とは呼ばねえだろうがよ……」
「では月に一度くらいですか?」
「週に数回は来てくれるよ。一番多い奴は2日に一回は店に来るぜ」
「おいオヤジ、テメェ!
その客のこと殺すつもりか!」
「え、なんで、俺怒られてるの?」
「だって、この店って開店してから一度も虫が出てないんだろ?」
「そういえば、蚊や羽虫の類も見たことがありませんね……」
「普通じゃないって。生物が吸っちゃ駄目な何かが出てるんだって」
「それは店を綺麗にしてるからだ!」
「ていうか、2日に一回食いにきてるのは、お前のところの上司だからな」
「ほう、支部長ですか?」
「おうよ」
「見損なったぜオヤジ、どんな弱みを握ったんだ」
「いやいや、単純に俺の店の味を気に入ってくれてるんだって!」
「半年前に街で偶然会った時に、あの人の顔色が気になってたんだけど、そういうことか」
「支部長には、今度人間ドックを勧めておきましょう」
信じられないことに複数名存在するようです。

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