第20回 『外伝「Remember the palm」プロローグ オヤッサン編』

へいらっしゃい!
ってこんな時間に珍しいじゃねえか。子どもは家に帰る時間だぜ。
帰る途中でお店に来たの。
ちょっと、オッチャンに相談があってさ。
俺に相談?料理でも習いたいのか?
そんなことしたら、兄ちゃんに怒られるって。
お母さんにも怒られるの。
いや、何で俺に料理の話を聞いただけで怒られるのよ!?
相談っていうのはさ、兄ちゃんのことでさ。
ってぇと、異形絡みかい。
ううん、プライベートなお話。
おっちゃんさ、兄ちゃんがいつも着てる服についてどう思う?
ジュニアがいつも着てるって、制服じゃなくて私服ってことか?
そうそう。
……ま、まあ、何て言うか、いつも同じだな。
うんうん。
まあよぉ、アレはアレで意味のある恰好なんだぜ。
そのまま戦闘に入ってもいいような一揃えなんだよ。例えば靴にも金属製の板が入ってるしな。
でもさ、前に兄ちゃんに「カニの脱皮かよっ!?」って、言ってたじゃん。
そりゃあ仕方ねえだろうが。
いつも同じ服じゃね?って聞いたら、自信満々で同じ服とズボンを5枚ずつ持ってます、ときたもんだ。
それそれ、問題はそこなんだって。
深刻な問題なの。
問題って、若者としてはどうかと思うが。基本似合ってるし、人に迷惑をかけるでもなしいいんじゃねえの?
ジュニアにとってユニフォームみたいなもんなんだろうぜ。
はぁ……おっちゃんさぁ、ユニフォームを来てデートに出かける人間がどこにいるのさ。
そりゃまあ、ゼロじゃねえだろうが珍し、ってデートォッ!?
うん。
って、デートォッ!
そう。
お、驚き過ぎて2回聞き直しちまったぜ……マジかよ、ジュニアがデートって。
ニワトリが太平洋横断飛行するようなレベルの話だぜ。
マジ。
マジなの。学校のクラスメートなんだよね。
オレたちも一緒で、4人で遊びに行くんだけどさ。
あ、ああ二人っきりじゃねえのか……って、それでも凄いんだけどな。
つまり、二人も顔を知ってる相手なのかい?
うん。私たちも仲が良いお姉ちゃん。
俺もだけど、雫とはすっげぇ仲良しかも。
おいおい、ジュニアがプライベートで遊ぶうえに、雫とも仲がいいってどんな相手だよ……ん?
……それってもしかして、緒川千春って女の子かい?
うん。千春お姉ちゃん。
オッチャン知ってるのか?
おう、まあちょっとな、ジュニアから聞いたことがあってよ。
兄ちゃん、よく姉ちゃんの話するしな。
だよねぇ。
それでさ、今回だけならいいんだけどさ、これからも姉ちゃんと兄ちゃんさ、遊びに行くと思うんだ。
いっつも同じ服だと、お姉ちゃんがションボリするかもって。
これからも遊びにってことは、ただの友だちじゃなくて、二人はそういうことなのか?
まだ、って感じだよな?
私たちがキューピッドなの。
なるほど、どういうことか分かってきたぜ。
面白、ゲフン、年長者として兄想いの二人にちょいと協力しますかね。
オッチャン、サンキュー。
他の人にも相談する?
それは、相談の内容次第だな。鈴鳴と久利辺りは役立つかもしれねぇしな。
遅くなったら家まで送っていくからよ、もうちょっと詳しい話を聞かせてもらえるかい?

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